私が小さい頃のスパゲティと言えば、ゆでてからフライパンで炒めるというもの。初めて「壁の穴」へ行ったとき、パスタをゆでている間に木のボウルの中でたらこをほぐしてバターと混ぜ、調味料(一合升を3つ合体させた中に入っている)を入れてさらに混ぜていました。カウンターに座ればその一部始終を見ることができるのです。そのときのシャカシャカというカトラリーの音が今でも忘れられません。「たらこ・イカ」や「たらこ・イカ・いくら」なんかをよくオーダーしてましたっけ。ひとりで気軽に行けたのがよかったし、当時まだ少なかった厨房を覗けるというのが魅力でした。刺身用に細く切ったイカがあれば、パスタとソースをあえるときに入れます。ゴージャスにイクラも入れるなら、盛りつけてから飾るように。でないと、粒がつぶれてしまいます。私のとっての和風スパの原点であり、時々無性に食べたくなるのがこれです。行儀は悪いけれど、ボウルに残ったたらこバターをバゲットでぬぐって食べるのも実は好きなのでした。
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■材料
(2人分)
スパゲッティ(1.6〜1.9mm)…200g
たらこ…1腹、バター…大さじ山盛り1
塩・こしょう…適宜、レモン(お好みで)
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■作り方
(1)
大鍋に湯を沸かし、塩を入れてパスタをゆでる。その間に次の(2)〜(4)の準備をしておく。
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(2)
シソは葉のつけねの硬い部分を取り除き、やわらかい部分をせん切りにする。このとき丸めて切ると切りやすい。
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(3)
たらこの薄皮に包丁で切れ目を入れて開き、包丁の背を使ってそっとしごいて薄皮からはずす。
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(4)
バターを皿に入れて、電子レンジの「弱」に30秒ほどかけて、やわらかくする。少し柔らかいけど溶けていない状態がベスト。
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(5)
大きめのボウルに(3)と(4)を入れてスプーンとフォークで混ぜる。
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(7)
パスタを1本すくってみて、爪で切って断面をチェックする。髪の毛程度の芯が残っているのがアルデンテ。ちょうどいい状態になったら、すぐさまザルにあげて水を切る。
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(8)
水を切ったらすぐに(6)のボウルにパスタを入れてあえる。1本食べて味のチェックをして、よければ盛りつけ、(2)のシソを飾る。好みでレモンを絞って食べる。
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●バターは有塩でも無塩でもかまいませんが、冷蔵庫のにおいのついていない、できるだけ新しいものを使った方がよりおいしく感じられます。
●塩は適宜としました。たらことバターを混ぜた段階で少し味を見てから塩をするようにしてください。たらこによっても塩が強かったり甘塩だったりするのです。塩は、できればマイルドな自然塩を使ってほしいです。
●こしょうは挽きたての黒こしょうが好きです。びん入りのスパイスにミルのついたお手軽なものが、どこのスーパーにも並ぶようになりました。長持ちするものなので、本格的なペッパーミルもおすすめです。
●「壁の穴」の秘密のスパイス(隠し味)は昆布茶だそうですが(もしかしたら根昆布の粉末かもしれません)、家庭で常備していることは少ないでしょう。シンプルな味つけにしました。(7)と(8)はスピードが命です。
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