ときどき羊羹を食べたくなる。かと思えば、量の多さに、げんなり。人間とはつくづく勝手な生き物だ。そんな私の夏の羊羹といえば、干し羊羹だ。以前、小さな和菓子屋さんに夏だけ並ぶ「干し羊羹」というのがあった。まわりがかりっとした、ちょっと「石衣」という菓子に似た感じの羊羹である。夏も終わりに近づき、またいつもの「干し羊羹」を買いにいった。ところが、もう夏も終わりなので作らないという。私があまりにがっかりしたからだろうか、奥さんが「作ったらいいですよ。羊羹を切って干せばできますから。ごくごく普通の羊羹でいいんですよ」と教えてくれた。やってみると、なるほど簡単。さいころ状に切って干すだけで、あとは蟻に気をつけるぐらいである。教えてくれた和菓子屋さんも改装を機に冷蔵のショーケースとなり、干し羊羹もなくなった。ちょうどそれと入れ替わるかのように、銀座あけぼのあたりで夏場の商品として見かけるようになったのは偶然だろうか。
|